君へ、約束の歌を。<実話元>
別人だってわかってるのに。
私、目を逸らせなかった。
よく見てみれば、そんなに似てるわけでもない。
でも、影が重なる。
…同時に、気付いたんだ。
『…彩紀、もう帰らない?』
「えっ?うちはいいけど…
陸部もういいの?愛璃」
『うん、いいの。ありがとね!
付き合ってくれて』
「ううん〜うちもテニス部付き合ってもらったし!」
笑顔の彩紀にはもちろん言えない、
陸部はもういいやって思った理由。
やっぱり入れないって気付いた理由。
…祐ちゃんの面影が、
陸部には染み込んでるから。
砲丸投げの選手の姿を見ただけで祐ちゃんへと繋がって、苦しくなってしまうから。
こんなんじゃいけないって思うけど。
私には、もう少し時間が必要みたい。
…彩紀はテニス部に入るって決めたから。
他の子達と色々な部活を見学して、
最後に行った、茶道部。
女の子がいっぱいで、雰囲気が明るくて。
和菓子が食べられたり、学祭の時に浴衣が着られるのにも惹かれて、入部を決めた。