君へ、約束の歌を。<実話元>
懐かしい曲名が並ぶ中に、
私の視線を止めたものがあった。
…「アゲハ蝶」
これって、あのアゲハ蝶だよね?
…マズイ。
咄嗟にそう思った。
「アゲハ蝶」は、
告別式以来ずっと避けてきた。
テレビで流れたら、耳を塞ぐくらいの勢いで。
歌える自信は…ない。
でもこれだけ曲があるし、私にこの曲が当たるとは限らないもんね。
――…そう思ってたんだけど、
「次、愛璃〜!!」
『はぁ〜い!』
彩紀からマイクを受け取って、
流れてくる曲を待つ。
〜♪〜♪〜♪〜
――…!?
嘘っ…!
…当たって、しまった。
こんな有名な曲を、知らないってパスすることなんてできない。
マイクを持ってる腕が震えてることに気付いた。
『〜♪〜…♪…〜』
涙とか、震えとか、想いとか。
全部押さえ付けて、無理矢理歌った。
メドレーだから、一曲一曲が短いのが救い。