君へ、約束の歌を。<実話元>



――どくんっ…



びっくりして、不意に鼓動が速くなったのを感じた。



…目に飛び込んできたのは、


陸上競技場。



来た時には背を向けてたから、
全然気付かなかった。


陸部として3年間、数え切れないくらい足を運んだ懐かしい場所を、久しぶりに目に映す。


中3の5月過ぎにも、ここには何回か来たのに。


もう免疫がなくなってしまったみたい。



懐かしさと悲しさが混じって、
泣きそうになってしまった。


…私は高跳びと短距離、時々砲丸投げ、
祐ちゃんは投擲に打ち込んだその場所。


もう二度とここに来ることはないって思ってたのに。




「あっバス来た〜!」



彩紀の声に視線を動かす。


乗り込んだバスの窓から見える陸上競技場に、



『ばいばい…』



小さく、呟いた。





< 222 / 287 >

この作品をシェア

pagetop