君へ、約束の歌を。<実話元>
――どくんっ…
びっくりして、不意に鼓動が速くなったのを感じた。
…目に飛び込んできたのは、
陸上競技場。
来た時には背を向けてたから、
全然気付かなかった。
陸部として3年間、数え切れないくらい足を運んだ懐かしい場所を、久しぶりに目に映す。
中3の5月過ぎにも、ここには何回か来たのに。
もう免疫がなくなってしまったみたい。
懐かしさと悲しさが混じって、
泣きそうになってしまった。
…私は高跳びと短距離、時々砲丸投げ、
祐ちゃんは投擲に打ち込んだその場所。
もう二度とここに来ることはないって思ってたのに。
「あっバス来た〜!」
彩紀の声に視線を動かす。
乗り込んだバスの窓から見える陸上競技場に、
『ばいばい…』
小さく、呟いた。