君へ、約束の歌を。<実話元>
だめ…っ!!
叫びは、声にならなくて。
駆け寄って引き止めたい体は、
動いてはくれなくて。
祐ちゃんは私に一度も振り返ることなく、
一歩、
境目から踏み出して、風に体を預けようとした。
『やだ…っ!!』
そこで、初めて声が出て。
初めて体が動いて。
屋上の縁まで駆け出すのと同時に、
祐ちゃんに向かって、精一杯手を伸ばした。
…でも、
伸ばした手は、
『ぃやぁっ…っ…!!』
するり、と擦り抜けて。
…祐ちゃんの姿が、
視界から消えた。