君へ、約束の歌を。<実話元>
メイド服はやっぱり目立って、擦れ違う人みんなが目を丸くして私達を見つめる。
突き刺さる好奇の視線にだいぶ慣れてきながら、私と友華はいろんな展示を見学した。
「…そろそろ和室行った方がよくない?」
時計を見ながら友華が言って。
『早めに行って着替えなきゃだもんね』
私も時計を見た後、
和室の方へと足を向けた。
「お点前(茶道の作法・手並み)上手くできるといいなぁ〜」
『失敗しませんよーに!』
和室に入って、隅の方の着替えスペースに荷物を置いて。
浴衣を出そうとした時だった。
――ポトッ…
何かが落ちたような音がしたけど、
私はそれを気に止めなくて。
「愛璃、落ち――…?」
友華の言葉が途中で止まったことに、
疑問を持って振り向くと。
友華の手には、
二つ折りが開かれてる、私の定期入れ。