君へ、約束の歌を。<実話元>


遺書に事細かにいじめの内容が書かれていたらしく、再現した様子が放送されていた。


その子も、命を絶つ方法として選んだのが飛び降りだったようで、女の子がビルの屋上に立つシーンまでご丁寧に映し出される。




『…ごちそうさまでした』



私はテレビから目を逸らして、そっと席を立つと、自分の部屋に向かった。



…家族みんながいるあの場所で泣くわけにはいかないから。


零れた涙は、隠せたと思ってた。




――ガチャ…



部屋に入って、机の上のティッシュを掴むとベッドに腰を下ろした。



数秒後…



――トントンッ…



ノックの音が静かな部屋に響いて、
返事をする前に入ってきたのは…



『…何?お母さん』



泣いてるのがバレないようにと、鼻をかむフリをして、ティッシュをゴミ箱に捨てた。


机の上を整理するフリをして、
さりげなくお母さんに背を向ける。



…きっと今の私、目が赤い。



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