君へ、約束の歌を。<実話元>
お母さんの姿は見えないけど、気配で私を見つめてるのが、なんとなくわかった。
「…思い出したんじゃない?
…祐ちゃんのこと」
小さな声で投げ掛けられたその言葉に、
胸が熱くなるのがわかった。
忘れたことなんてないっ…!!
言葉にはせず、机の上の物をいじっていた手を止めて唇を噛み締める。
「忘れた方がいい、なんて、
もちろん言わない」
後ろは、振り向けない。
「いつか…お参り行かなきゃね」
…お母さんも、ちゃんと考えてくれてたんだ。
−お墓の場所、知ってるの?−
前から聞きたくて聞けなかったことを言葉にしようとしたけど、お母さんの言葉に頷くだけで、精一杯。
――ガチャ…
お母さんが部屋を出ていくまで、
顔を上げられなかった。