君へ、約束の歌を。<実話元>
『ありがと…』
確証はなかった。
でも、
確信はしていた。
お母さんは、きっと、
お墓の場所を知ってる。
私が踏み出す、一歩を。
『今年も、もうあと一ヶ月だよ…』
言葉は入り込んで来た冷えた夜の空気に触れて、少しだけ、白く染まって消えた。
静かな夜。
部屋のベッドに腰をおろし、
窓から空を見上げて呟く。
窓の外に広がる星空。
月の光がどんなに眩しくても、
私の心には影が射してる。
…眩しすぎるその光は、まるでその私の心の影を浮き立たせるかのようで。
お母さんの口から、
久しぶりに祐ちゃんの名前を聞いて。
やっと、決心がついた。
落とした視線の先は、
右手に握られている定期入れ。