君へ、約束の歌を。<実話元>
―――…
『ここ、なんだ…』
車から降り立って、辺りを見回した。
…ついに来た、この場所に。
結局大学の手続きとか学校関係のことが色々あって。
迎えた、冬休み。
吐く息は白く、
コートとマフラーをしっかり身につけて。
冷たい空気は、しんとしたこの場所に相応しい雰囲気を醸し出してる。
…ここに、祐ちゃんがいる。
私は、同じく車から降りたお母さんに声を掛けた。
『私、一人で行かせてもらえないかな…』
「え?…でも、」
『お願い』
お母さんは何か言いたそうだったけど、
私を見つめた後小さく頷いた。
きっと私の気持ちを汲み取ってくれたんだと思う。
『ありがとう』
マフラーをしっかり巻き直して、
小さな花束を持って、
一歩足を進ませて。
振り返って言葉を続けた。
『寒いし、車の中で待ってて。
…私、大丈夫だから』
にこっと微笑んでみせる。