君へ、約束の歌を。<実話元>
「どうした?」
祐ちゃんも口笛を止めて、私の方を見る。
『二番からの歌詞忘れた…!』
「えっ?…あっそっか〜!
愛璃ちゃん、あの時は伴奏だったから歌詞覚えてない?」
合唱コンクールの時、
私はピアノ伴奏だった。
私が小さい頃からピアノを習ってるってことは結構みんな知ってるから、よく合唱とかで伴奏を頼まれる。
ピアノを弾くのは好きだから、私も立候補したりするけど。
…でも、この曲、練習の時には歌いながら弾いてたし。
ピアノ弾きながら歌うのも好きで、
よくやってるから。
歌詞もちゃんと覚えてたハズだったんだけど…
まさかのド忘れ。
『ごめん〜!忘れちゃった!』
手を合わせて祐ちゃんに謝る。
…周りでは、セミの鳴き声が微かに聞こえ始めた。
夏ももう終わりだし、そろそろセミの鳴き声も聞こえなくなるんだなぁなんて、頭の片隅でちらっと思う。