君だけが好き!
 


「な、なんで笑ってるの?」

すると、聡は目に涙をためながら言った。

「だって直斗、顔真っ赤にして言うセリフじゃないだろ、今の!アハハハハ!」

「ひどい!聡、ひどいよ!……アハ、アハハハハ!」

私と聡は、二人でずっと笑いあった。



「……ただいま」

私は知ってたはずなのに、忘れていた。

幸せに浸りすぎて、考えてなかった。

幸福は、そう長く続かないことに。

「あなた、今が何時か分かってるの?」

居間に入ると、母が私を睨み付けていた。

「1時間17分3秒も門限を破るなんて、いいご身分ね。本当に悪い子」

「ごめんなさい」

「そうやって謝れば許されると思ってるの!」

「ごめんなさい」

「ああ、イライラする!あなたって本当、可愛くないわね!産むんじゃなかったわ!」

「……ごめん…なさい」

「うるさいのよ!」

「ごめんなさい」

「うるさいって言ってるでしょ!」

バチン。

音に遅れて、頬にヒリヒリとした痛みが走った。

「ごめんなさい」

「うるさいうるさいうるさい!!」

「ごめ……ぐぅ…っ!」

腹を蹴りあげられて、胃液が飛び出す。


 
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