君だけが好き!
「お母さん、ただいま」
あれから、帰り道も無言に近い状態だった。
「おかえり」
今日は機嫌がいいのか、返事をしてくれた。
その事実に私は少し安堵する。
「あのね、お母さん。今日は算数のテストが返ってきたんだよ」
そう言って、母にテストを渡した。
褒めてくれはしなくても、今日一日の機嫌はよくなるだろう。
そう、思っていたら。
「何、この点数」
「……え?だって、私こんなに高い点数…」
「どこが高いの!お前は勉強すらできないの!?」
……こうなることも、予測できたのに。
なぜか、考えたくなくて、心が勝手に否定していた。
「……があ…っ!苦し…い……おかあ…さ…」
母が私の首を掴んで、押し倒す。
次いで、足が私を踏み潰す。
胃液が、血液が、口から流れ出る。
「汚い、汚い、汚い!汚いし勉強もろくにできないし、約束事も守れない!どうしてあなたはそんなふうになってしまったの!お母さんはちゃんとしつけてきたわ!」
「ごめ…なさ…い」
「このクズが!どうして産んでしまったのかしら!」
私の意識がとぶ寸前。
焦げ茶色の髪をした、彼に似た人影を見た気がした。