君だけが好き!
入学式を無事に終えた私たちは、教室に戻ってきていた。
「……これで、今日の行事は全てです。みなさん、明日から普通授業ですので、気を引き締めて登校してきてくださいね」
ガタガタと椅子を鳴らしながら、みんなが席をたっていく。
「私たちも帰ろっか」
「そうだな」
私と聡が教室を出ようとしたとき。
「北岡くん」
聡よりも早く、私は振り返る。
そこには、今朝の自己紹介で聡の隣にいたパツ男が笑顔で立っていた。
「今日、これから時間あるかな?」
「ありません」
私は反射的に、パツ男の誘いを拒否する。
「あれ、僕、北岡くんに聞いたんだけどな」
「聡はこのあと、私と約束をしています。お引き取りください」
「おい、直斗……」
聡が私の腕を掴む。
でも、私はパツ男から目をそらさない。
目力で死んでくれないかな、なんて思いながら睨み続けた。
「……ふぅ、分かったよ」
パツ男がわざとらしくため息を吐いて、私たちに背を向けた。
「……聡、大丈夫だった?変な人に声かけられて、怖くなかった?」
「いや、むしろ怖いのは直斗だって。アイツは俺に暇かどうかを聞いただけだぞ?」
「でも、私……っ!」
「よし、帰るか!んで、ゲームしようぜ!」
私の言葉を遮るようにして、聡が言う。
昔からずっと一緒だったから、気を使ってくれてるんだということが手に取るように分かる。
「……………うん、分かった」
私は聡をとられたくないんだよ。
聡には、私だけを見ててほしいから。