君だけが好き!
次の日の朝。
一応、昨日聡が迎えに来た時間まで家で待ってたけど来なかったので、聡の家に迎えに行くと笑顔で出てきた。
「迎えに来てくれたのは昨日だけだったんだね」
少し白々しさを含めた言い方をしてみる。
もちろん、そんなことを本気で思ってるわけもなく、ただ意地悪をしたくなっただけ。
「仕方ねーだろ。今日は起きるのが遅かったんだよ」
聡の顔を見ればなんだかムスっとしてて、その顔も可愛い。
「ふふ、ごめんね。ちょっとからかってみたくなっただけ」
すると今度は一変、頬を緩ませる。
表情をコロコロさせて、感情表現豊かな彼。
私はといえば、理性を押さえつけるのに必死なわけで。
下手したら今すぐにでも彼を押し倒してキスして(自主規制)してしまうくらいなのに。
「直斗、ヨダレ」
「へ、あ、うわ」
聡が私の口元にその白くて細くて綺麗な指を近づけて、拭った。
「ちょ、聡!?」
「ああ、今日ティッシュ忘れてさ。別にズボンで拭っときゃ大丈夫だよ」
「そうじゃなくて、私のヨダレなんて汚いよ!」
だって、聡は自分の指で私のヨダレを拭ってその指をズボンで拭って……。
「?なんで?直斗のだから大丈夫だろ」
私は自分の顔が熱くなっていくのが嫌でも分かった。
「おい、大丈夫か?熱でもあるんじゃねーの?」
そう言って今度は額と額をくっつける。
そんなことされたら、嫌でも考えちゃうよ。
実は彼も私のことを好きなんじゃないかな、なんて、馬鹿なことを。