君だけが好き!
「大丈夫、大丈夫だから!」
「大丈夫そうには見えねーんだが……」
「いやもう本当!本当に大丈夫!よし、元気に学校へ行こうそうしよう!」
「お、おう」
聡ってば、なんでこうも鈍感なんだろ。
聡の鈍感さは筋金入りで、それにはいくらか救われたこともあった。
あったけど、救われないことも多々あるわけで。
恨めしげに聡を見ると、私の視線に気づいてニカッと笑った。
その笑顔にやられて、私はまた赤面する。
「北岡くん」
そんなときだった。
アイツが声をかけてきたのは。
前を見ると、もう学校の目の前で、さらにそこではパツ男が笑顔で手を振っていた。
「山田くんも、おはよう」
「馴れ馴れしく呼ばないでください」
「ごめんごめん。……ね、北岡くん。昨日は約束があったみたいだけど、今日はあいてる?」
こいつ、また。
私は舌打ちを隠そうともしなかった。
「あー、ごめんな。俺、今日はまた別の用事があるから」
聡がパツ男に断りを入れてくれた。
すると、パツ男は少し残念そうに「そう」と呟いて学校の門をくぐっていった。