君だけが好き!
「……聡、ちなみに聞くけど、用事って何?今日何かあったっけ?」
私は単純に興味で聡に聞いてみた。
「いや、何も無い。直斗がまた寂しがるかな~と思ってさ」
「聡……っ!」
私はあまりにも感激して、思わず聡に抱きつく。
「やめろ恥ずかしい!」
そう言いながら照れる聡が可愛くて仕方がない。
こうして抱きつくことができるのも、親友の特権。
それはとても嬉しいことであり、同時に落ち込む。
きっとどう頑張っても、私と聡は親友より上に行かないだろうから。
「おら、授業始まるから!教室行くぞ!」
「うん、そうだね!」
だから私は、今日も明日も自分の気持ちを押し殺して、聡に笑顔を向ける。
きっと聡は今の関係を崩したくないだろうし、私も今の関係を失うのは怖いから。
聡に嫌われてしまうくらいなら、聡が私のもとから離れてしまうくらいなら、私は今のままでかまわない。
「……おい、直斗!」
「……え、何!?」
「やっぱり熱あるんじゃねーのか?さっきからボーッとしてるし」
「大丈夫だよ。あと一分でチャイムなるし、私、自分の席に戻るね」
まだ何か言いたそうな聡を放っておいて、私は自分の席についた。
今日は朝からパツ男に声をかけられて、嫌なこと考えてしまって、なんだか疲れた。
少し、眠ろう。
睡眠はストレス発散でもあると何かのテレビで見た気もするし、何より、何も考えなくてすむから。
その日私は、一日中眠りこけていた。