君だけが好き!
夢の中で、私は真っ白な世界に一人で立っていた。
前も後ろも右も左も上も下も、真っ白で果てが見えない。
「ここに聡がいれば、二人きりで完璧なのに……」
でも、ここが私の夢の中なら、聡の一人や二人簡単に出せそうだけど。
いくら念じても、聡は出てこなかった。
そういや、夢って何かのお告げだったり、昔の大切な記憶だったりするんだよね。
じゃあ、この真っ白な世界は何を意味してるんだろう。
そんなふうに考えながら歩いていると、人影が見えた。
あれは……。
「おかあ…さん……?」
「久しぶりね」
お母さんが、立っていた。
笑顔で手を振りながら。
「どうして、お母さんが……」
夢の中でも、母の存在は恐ろしく感じられた。
「そう遠くない未来、あなたはまた不幸せになる」
突然、そんなことを言い出した。
私は理解できなくて、母を呆然と見つめる。
そして更に、お母さんはそれはそれは楽しそうに告げた。
「ざまあみろ」
そう言って笑う顔は、台詞には不釣り合いなくらい、美しくて。
私は何も考えられなかった。
自分の夢の中、自分の頭の中なのに、母に支配されているような気すらして。
怖くて怖くて、膝から崩れ落ちる。
すると地面が割れて、白とは真逆の真っ暗な世界へ堕ちていった。