君だけが好き!
 


「おい直斗!もう放課後だぞ?」

私が目を覚ますと、聡が私の前の席に座ってこっちを向いていた。

「あ…、ごめん」

「いや、別にいい……って、おい!お前、何泣いてるんだよ」

「あれ、何これ」

何故か、聡の顔を見たら涙が出てきた。

「……なんか悪い夢でも見たのか?」

「うん。……お母さんが出てきたんだ」

お母さんが私に笑いながら、不幸になると言った。

「私ね、怖い。……怖いんだよ、聡。私、あの夢が正夢になるような気がして…、そうなったときに、聡まで巻き込んじゃう気がして…!」

私がこんなふうに他人に気持ちをぶつけるのは初めてで、また、怖くなった。

迷惑がられてないかな、なんて考えてしまって。

「……大丈夫」

ポンポン、と私の頭に優しく触れる手はとても大きくて温かくて、安心できた。

「俺はな、直斗に巻き込まれて不幸せになるような、そんなヤワな男じゃねーよ。だから、な?」

「……う…ん。うん、うん…っ!」

たくさん首を縦に振った。

もう、聡に気をつかわせたりしないように。

安心してもらうために。

「……ごめんね。迷惑だったよね。私、もう大丈夫だよ!本当にありがとう!」

そう謝ると、聡はとても不機嫌そうな顔になった。

「あのな……。俺、直斗に謝ってほしくないんだけど」

それって、私なんかに謝られても困るってこと?

「直斗がそうやって自分の気持ちを全力でぶつけてくれたことが、俺はすげー嬉しい。だから、謝らなくていい!分かったか?」

聡の顔を見ると、夕焼けのせいか少し顔が赤くて。

「……聡!私、すごく感動してるよ!ありがとう、本当にありがとう!」


 
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