君だけが好き!
「ほら、帰るぞ」
聡が私の手を引いて、ずんずん廊下を進んでいく。
私は聡に手を握られてる事実に困惑して、変な汗をかいてしまう。
「……なあ、直斗」
学校を出てしばらくしてから、聡が急に立ち止まった。
私はまだ引っ張られているかたちだったので、ぶつかってしまう。
「いてて……。どうしたの、聡」
バッ、とこっちを向いた聡は、それはそれは真っ赤な顔で。
しばらく口をパクパクさせたり、かと思えば何かを考えるように黙りこんでしまったり。
私は何がなんだか分からなくて、とりあえず聡が何かを言い出すのを待ってみることにした。
それから何分たったか分からない。
聡は私の手を握ったまま、決心したように口を開いた。
「……俺、は」
「うん」
「俺は、直斗のことが好きだ」
見ると耳まで真っ赤だ。
そんな聡も可愛いなあ。
それにしても、何かすごいことを聞いてしまった気がする。
「だから、俺と付き合ってほしい!……駄目、か?」
繋いだ手が、少し震えていて。
それは私の震えかもしれないし、聡の震えかもしれない。
「……私のほうが、もっと好きだよ。聡に負けないくらい、もっと」
「直斗……っ!」
すると一変、今にも泣きそうだった顔が一気に笑顔になる。