君だけが好き!
「ていうか、直斗が鈍感すぎるんだよ!俺がどれだけ苦労したか……」
鈍感?私が?
「いやいや、鈍感なのは聡のほうだよ」
「直斗だ!入学式の日なんて、俺に抱きついてきやがって!俺がどれだけ理性を押さえつけたと……」
「だ、だって、それは聡に私の気持ちに気づいてほしかったからで……!」
お互いに何秒か目があったあと、気づけば二人で笑いだしていた。
こんなにお腹が痛くなるまで笑ったのは、いつぶりだろう。
「……………はー、こんなに笑ったの久しぶりだ。じゃ、ほら」
聡が私の手を握り直す。
「……うん」
私も、聡の手を握り返す。
親友から恋人になった、それだけのことなのに、私と聡はお互いに顔を真っ赤にしていて。
まったく初々しいな、なんて他人事のように考えた。
聡はまっすぐ前だけを見たまま、私の手を引いて歩いていく。
表情は見えないけど照れているのが分かって、私も余計に照れてしまった。
誰かに恋愛として『好き』と伝えたこともないし、もちろんそんな感情を聡以外に抱いたことなんてない。
確か、この間読んだ小説では、こんなふうに告白された主人公が相手のキスをねだってた……よね。
「そ、聡……っ!」
「な、なに?」