君だけが好き!
出逢ったあの頃
私は十歳のとき、聡士のいるこの町に引っ越してきた。
「今から転校生を紹介するわね」
先生が私の肩を押す。
「転校生の山田さんよ。さ、山田さん、挨拶して」
「山田 直斗です。よろしくお願いします」
ペコリ、と形だけの礼をする。
クラスメートのやつらとよろしくするつもりは無いし、無駄に関わってほしくなかった。
「じゃあ、山田さんは窓際の一番後ろの席に座ってね」
言われたとおりに、窓際の一番後ろの席に座る。
すると、いきなり前の男の子が話しかけてきた。
「な、お前。お前って男か女か分かんねーよな」
失礼な。
「直斗って名前は男っぽいし、制服だって男物のズボンだけどさ。顔は女みたいだし、髪の毛超長いし」
私の外見は、腰まである髪をポニーテールにしていて、顔はモデル並みだと言われることが多い。
十歳なのに、本気でナンパされたこともあった。
制服は男子の着るズボンを着用している。
「しかもさ、先生が山田『さん』って言ってたし。お前どっちなの?」
……うるさい。
なんだコイツは。
そりゃ、転校生が珍しい気持ちは分かる。
分かるけど、静かにしてほしい。