君だけが好き!
彼の想い人
「聡、おはよー!」
「おう、おはよう」
晴れてラブラブカップルになれた私達。
まあ、だからといって何かが変わったとかは無いんだけど。
いつも通りの、変わらない私達。
昨日見たテレビの話しとか、好きな音楽の話しとか、そんなくだらない話しをしながら、そろそろ通い慣れた高校の門をくぐる。
教室までの道のりも、同じような話しをしながら歩く。
聡とこうして歩くことができて、本当に幸せだと思う。
「おはよう」
そんな幸せを一気に砕くような、耳障りな声が聞こえた。
「おー、おはよ」
聡は心なしか、私に『おはよう』と返したときよりも少し気だるげに返事をする。
「教室に入れません。邪魔です」
「えー、僕、北岡くんと話しがしたいのに」
パツ男が、そこにいた。
「俺に話しって何?」
「山田くんのいないところで、ね?」
そう言ってニッコリ笑うパツ男は、普通に爽やかイケメンだった。
まあ、私の心は聡だけのものだけど。
ていうか、なんだよ私のいないところでって。
告白する気満々じゃねーか、私がそれを許すとでも?
「聡、行くことなんか無いよ。教室入ろ」
袖を引っ張って、入るように促す。
それでも、聡は動かなかった。
「聡……?」
「悪いな、直斗。俺、ちょっと行ってくるわ」