君だけが好き!
 


私は安心感からか、パツ男の言葉を疑うことが出来なかった。

『北岡くんのケータイを借りて』なんて、普通に考えて無理なのに。



そして、放課後。

すぐに来てほしいとのことだったから、私は少し早歩き気味に帰り道を進んでいく。

それにしても、大事な話ってなんだろう?

プロポーズ、とか?

きゃー!聡、それはまだ早いよー!

聡のタキシード姿……うん、いい。

でもやっぱり、聡にはウェディングドレスを着てほしいなぁ。

きっと顔を真っ赤にするだろうから、ウェディングドレスの白とリンゴのような真っ赤な顔が絶妙なグラデーションを……。

いやいや、もしかしたら新婚旅行の話かもしれない。

旅行→温泉→湯けむり聡ッッ!

私はヨダレを垂らしながら(プラス少しニヤけながら)聡の家へ急いだ。

このペースで歩けば、聡の家まで約五分というところか。

……その時だった。

頭に大きな衝撃を受けて、視界がぼやける。

なんだこれ、と呟こうとしたが、うまく呂律がまわらない。

そして意識が途切れる直前、誰かが私の身体を支えてくれたみたいだけど、それが誰なのか振り返る前に私は深い闇にのまれていった。



「ごめんね」

そう呟いた彼の声は、私には届かなかった。


 
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