君だけが好き!

痛みと記憶と大事な人と

 


「んぁ……ここ…あれ」

私が目を覚まして最初に目に入ったのは、ホコリの被ったいくつかの段ボール。

「おはよう、山田くん」

「お前……は…っ!」

私を上から見下ろしていたのはパツ男だった。

思わず殴りかかろうとしたけど、腕と足が縛られているらしく動けない。

「……どうして私をこんなところに?」

私は聡の家に行かなきゃならないのに。

パツ男の相手なんてしてる暇は無いのに。

「いいね、その目。僕はそういう風に誰も寄せ付けない君が好きだった」

「あの、何を言ってるのかよく分からないんですが」

「君が転校してきた日、僕は君に一目惚れした。強がりでなんとか自分を保ってます、って感じがたまらなかったよ」

そう言って少し頬を染めるパツ男。

「変態だね」

「ありがとう」

ニッコリと、それはそれは嬉しそうに笑う。

「だけど次の日から、北岡くんにだけ笑顔を向けるようになっていた。転校初日に僕を魅せた目も、相手の出方を伺うその辺りのクズのような目になっていた……」

そう言うと、今度は悲しそうに目を伏せた。

なんなんだコイツは……。

「そして僕は思った。山田くんの目は、僕だけに向いていればいいんだと。その為にも、君を僕好みにしてしまえばいいと…っ!」

危ない。

私は直感的にそう悟った。

「……私に、何をする気ですか」

「やっぱり山田くんは賢いね。話が早くて助かるよ。僕としても、本当はこんなことしたくないんだけど……」

逃げなきゃ。

少しでもコイツとの時間を稼いで、機会を伺わないと。


 
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