君だけが好き!
私は今、腕と足を紐状の何かで縛られていて、横向きに寝転がらされている状態。
「あ、そうそう!北岡くんが呼んでるってアレ、嘘だから」
「……っは?」
パツ男の伝えた伝言は嘘?
じゃあ、パツ男が意地悪で送ったとかいうあのメールが、本物?
じゃあじゃあ、聡は今も、屋上で私が来るのを待ってる?
「パツ男!てめ……え?」
突然の出来事に、私の頭がついていかない。
ただ、左の頬に痛みがジンジンと広がるのは感じられた。
「少しうるさいよ、直斗」
呼ぶな。
私の名前を呼んでいいのは、聡だけ。
「私の名前を、呼ばないでくれる……?」
怖い。
私を叩かないで。
オカアサン ヲ オモイダシテシマウ。
「やっぱり、一回くらいじゃ駄目か」
そう呟いて、私の顎を持ち上げる。
「一つ教えてあげる。僕の名前は聡太。聡って呼んでくれていいよ」
「うるさいのはお前のほうだよ、パツ男」
もう一度、今度は右の頬を叩かれる。
「悲しいね。大好きな直斗を何度も叩かないといけないなんて」
イタイ。イタイイタイイタイ。
そのあとも、パツ男に何度も何度も叩かれて。
何度も何度も足で踏まれた。