君だけが好き!
~聡side~
……遅い。
直斗はいつまで待たせるんだ。
最後の授業が終わってから、もう一時間はたっている。
メールの返事は返ってきたし、見てないことはないと思うんだが。
「……ったく、仕方ねぇな」
教室まで行くか。
直斗にパツ男は危険だということも伝えないといけないし。
「おーい、直斗……あれ?」
教室に来てみたが、人っ子一人いない。
まさかとは思うが、先に帰ったのか?
いやでも、直斗が俺との約束を破ったことねぇし……。
「……ま、考えてても仕方ねぇ。直斗ん家にでも行くか」
靴を履き替えて校庭を少し駆け足で突っ切る。
なんだか、胸騒ぎがした。
「直斗……っ!」
たまらずに帰り道を走り出す。
早く直斗の顔を見て安心したかった。
そして、俺と直斗の家の近くにある公園を通りすぎようとしたとき。
俺は、見てしまった。
直斗とパツ男が、小さなベンチに腰かけているのを。
まるで恋人に話しかけるときのように頬を染めている直斗の笑顔を。