君だけが好き!
「俺の家もこっちなんだよ」
「……ああ、そう」
転校初日だし、いろんな人が話しかけてくるしで、私はとても疲れていた。
その上、この男の子と帰り道が一緒だなんて。
「なんでお前は転校してきたんだ?」
「君に言う必要は無いよ」
「好きな食べ物とかあるのか?」
「特には」
「じゃあ、嫌いな食べ物は?」
「別に」
「友達になろーぜ」
何この子。
本当にやりづらい。
それに、私と友達になろうなんて、どうしてそんな。
たくさん無愛想にして、人を寄せ付けないようにと壁を作ったのに。
本当は、私を分かってくれる友達が欲しい。
でも、そんなことは望んではいけないこと。
だから……ううん、でも……。
私は、戸惑いを隠せずにいた。
「……私は、友達とかいらないから」
やっとのことで、声を絞り出す。
もしかしたら、震えていたかもしれないし、彼はそれに気づいたかもしれない。
「じゃあ、私の家すぐそこだから」
私は彼から逃げるように、家へと駆け出した。