君だけが好き!
 


「じゃあ、こいつの名前言ってみろよ。親戚なら知ってんだろ」

駄目。

大人に逆らっちゃいけない。

「君、待って!私なら、大丈夫だから……」

「うるせぇ。俺にはぜんぜん大丈夫そうに見えないね」

「……っ」

図星をつかれて、それ以上言葉が紡げなかった。

「おい、クソガキ。大人をあんまりなめちゃ駄目だよ?それに、よく見ればお前も綺麗な顔してるし……。一緒に連れてってやるよ」

このままじゃ、彼まで巻き込んでしまう。

私のせいで、彼まで――。

「助けてー!誰かー!!」

突然、彼が叫んだ。

「な、テメ、……くそっ」

男は私の腕を掴んで、引っ張って行こうとする。

「やめろ!直斗を離せ!」

彼が男の腕に噛みつく。

「おい、離せよガキ!」

「駄目だよ君!そんな危険なことしないで!」

そうこうしているうちに、男が彼を殴り出す。

そのおかげで私は腕を離されたけど、彼への暴行は止まらない。

「やめて!私を連れていっていいから!叩かないで!」

イタイから。

いっぱいいっぱい叩かれるのは、いっぱいいっぱいイタイから。

「おい!坊主、大丈夫か!?」

気づけば、私の後ろには知らないおじさんが驚いた顔で立っていた。

きっと、彼の「助けて」を聞いて助けに来てくれた人なんだろう。


 
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