君だけが好き!
そのおじさんを先頭にして、近所に住むいろんな人が出てきた。
「くそ、なんなんだよ!」
男は彼を掴んでいた腕を離して、負け惜しみを吐いてどこかに駆け出して行ってしまった。
しばらく呆然としていると、後ろからサイレンが聞こえてきた。
「おい、坊主とそこの女の子、警察も来たし、もう安心していいからな」
おじさんが笑顔で私の頭を撫でる。
私は頭を撫でられたことなんて無かったから、くすぐったくて目を閉じた。
「大丈夫だったか?怖い目にあってないか?」
私が頭を撫でられていたすぐ横で、彼は私に笑顔で言った。
自分も怖い目にあったのに、彼は真っ先に私の心配をしてくれる。
頭を撫でてくれたおじさんといい、こんな私をかばってくれた彼といい。
どうして、どうして。
「え、やっぱり怖かったのか!?泣くなよ!」
泣いてる……?私が?
「……直斗、もう、大丈夫だから」
「っ!……いま、直斗って……」
「え……お前の名前、直斗だろ?」
呼んで、くれた。
私の名を、彼が呼んでくれた。