君だけが好き!
 


両親にも、直斗と呼ばれることは少なかった。

二人が離婚してからは、余計に呼ばれなくなった。

私はお母さんに引き取られて、転校を繰り返していた。

お母さんは何事にも厳しい人で、門限が一秒でも遅れたり、テストで悪い点を採ったりしたら、ひどくぶたれた。

でも、私はお母さんを嫌いになれなかった。

だって、怒ったとき以外のお母さんはすごく優しかったから。


「……そっか」

公園の片隅にある、小さなベンチ。

警察の事情聴取が終わったあと、彼はずっと、私の手を握って話しを聞いてくれていた。

公園の入り口には、彼の両親が立っている。

私の親は、来てはくれなかった。

期待なんて、これっぽっちもしていなかったけれど。

「……ありがとう、こんな話しを聞いてくれて。私、もう帰るね」

「ん、気をつけて帰れよ」

私はうなずいて、公園の出口まで歩いていく。

半分ほど行ったところで、彼の名前を聞いていないことを思い出した。

振り返って聞こうとした、そのとき。

「なあ、直斗」

彼が先に、私に声をかけてきた。

「俺とお前は、もう友達だからな!だから、直斗!俺のことは聡士って呼べ!」

「……き、君と友達になった覚えはないよ。でも、仕方ないから、聡って呼んであげる」

「プッ…アハハハハ!」

彼……聡が急に笑い出した。


 
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