オノマトペ
白いレースのカーテンの隙間から差し込む、淡い月の光。

春のひんやりとした夜気の中を静かにたゆたう光を滑る、羊が一匹羊が二匹、三匹目の毛皮を強奪してもこもに包まれ安らかに眠れ~、なんていう変な歌。

コンクールで何度も優勝している和音のバイオリンの腕は確かだ。

その美しい旋律に妙な歌は邪魔なだけなのだが、幼い頃から和音の歌とバイオリンをセットで聴いている花音には、それはそれは優しい音なのだ。

やがて落ち着いた花音は目を擦りながら笑顔を見せる。

「お兄ちゃん、ありがとう。落ち着いたよ」

「それならば良かった」

キラキラと光の粒が飛ぶような綺麗な微笑みを浮かべる和音。

「じゃあもうおやすみ。明日学校に遅れないようにね」

自身も修業のために5時に起きなければならない拓斗は、欠伸を噛み殺しながら部屋を出て行こうとする。

それを花音は止めた。

「ま、待って拓ちゃん。あの、その……また怖い夢を見ないように、一緒に寝て欲しいな……」

モジモジと顔を赤らめながら五所川原を抱きしめる花音。

「ええ~?」

拓斗は眉を潜めた。

それはそうだろう。

高校生にもなって妹に添い寝はちょっと恥ずかしい。

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