オノマトペ
「今日は“ばいおりん”弾かねぇの?」
「ああ、ここはね……」
と、和音は耳を澄ませる。
十五年ほど前に流行った“不機嫌なマイハニー”のジャズバージョンが、薄暗く落ち着いた雰囲気の店内を包み込むように静かに流れていた。
「マスターの選んだ曲を聴きながらの方が、おいしくお茶を飲めるからね」
「ふーん、そんなもんか」
さして興味もなさげに返事をした鷹雅は、勢い良く椅子に座る。そこにマスターが水を持ってきた。
「鷹雅くんは甘い方が良かったんだよね。じゃあ……シトラスティーに蜂蜜多め、でどうかな。歩き回って疲れただろうし」
「お前選ぶのハズレなしだから、それでいーぜ」
「それじゃあ、ふたつ、お願いします」
マスターにそう言ってから、和音はさっと店内を見渡した。
「薊さんはいないんですね」
「さっき、ふらりと出かけてしまってね」
少しだけ肩を竦め、マスターは答える。
「ああ、やっぱり」
くすり、と和音は笑う。
心地よい音楽の流れる店内には、女性客の姿が見受けられなかった。
「ああ、ここはね……」
と、和音は耳を澄ませる。
十五年ほど前に流行った“不機嫌なマイハニー”のジャズバージョンが、薄暗く落ち着いた雰囲気の店内を包み込むように静かに流れていた。
「マスターの選んだ曲を聴きながらの方が、おいしくお茶を飲めるからね」
「ふーん、そんなもんか」
さして興味もなさげに返事をした鷹雅は、勢い良く椅子に座る。そこにマスターが水を持ってきた。
「鷹雅くんは甘い方が良かったんだよね。じゃあ……シトラスティーに蜂蜜多め、でどうかな。歩き回って疲れただろうし」
「お前選ぶのハズレなしだから、それでいーぜ」
「それじゃあ、ふたつ、お願いします」
マスターにそう言ってから、和音はさっと店内を見渡した。
「薊さんはいないんですね」
「さっき、ふらりと出かけてしまってね」
少しだけ肩を竦め、マスターは答える。
「ああ、やっぱり」
くすり、と和音は笑う。
心地よい音楽の流れる店内には、女性客の姿が見受けられなかった。