オノマトペ
「……小岩井、さん」

静かに呼びかけると、ややあって、小岩井が僅かに振り返った。

酷く憔悴した顔に走る、紅い傷が目に映る。

「小岩井さん……お怪我をなさったんですか?」

慌てて駆け寄り、小岩井を見下ろす。

頬や肩に火傷、胸は抉られた痕、そして血塗れの手。

「手当てを……」

保健室に走り出そうとする雪菜に、小岩井が静かに制止の声をかける。

「このくらいの傷、、大丈夫です……構わないでください」

「大丈夫じゃありませんよっ!」

思わず口調が強くなる。

こんなに大怪我をした小岩井を見るのも初めてだったが、こんなにも憔悴しきった顔を見るのも初めてだった。

身体に刻み込まれた傷以上のものを、心の奥に抱えているのではないのか。そう思うのに。

「大丈夫ですから……」

そればかりを繰り返す小岩井。

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