オノマトペ
8月も後半に入ったある日。

三日三晩考えに考え、丁寧に言葉を選んで書かれた愛しのダーリンの文(ふみ)を読み終えた花音は、自室の机に向かい、せっせと返事を書き始めた。

現在、花音の中での優先順位は、『宿題<バイオリンレッスン<お友達と遊ぶ<お兄ちゃん、拓ちゃんと戯れる<ダーリンへのお返事』となっている。


なんてったって初めての恋。

なんてったって初めてのお付き合い。

なんてったって初めての文のやり取り。

初めてづくしは楽しくて仕方ない。



「出来たぁ」

ウサギ模様のカラーペンを置き、丁寧に便箋をたたんで、ウサギの描かれたピンクの封筒に押し込む。

およそ10枚ほどの便箋を押し込められた封筒は、はち切れそうなくらいパンパンだ。

単に今日の出来事や思ったことを書き綴った日記のようなものなので、ところどころにキラキラペンの愛らしいイラストがついた、内容のうっすーい、チビッ子剣士には迷惑なだけであろう『文』なのだが。

それでも花音はにこにこ笑顔だ。

「早く善くんに届けて来よう~っと」

と、ピンクの封筒を抱え、スキップでもしそうな弾んだ足取りで部屋を出る。

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