オノマトペ
本当は中身を見せてはいけないのだが。

この学園の生徒や教師たちのほとんどは知っているし、この馬鹿に分からせるためにはきちんと事実を告げる必要があるだろうと、目の前でドラグノフを組み立ててみせた。

「それは……」

艶やかに光るドラグノフを見て、和音は目を見開く。

「ケースの中身は狙撃銃。私、ロシア連邦大統領直属のエージェントなのよ。音楽家じゃないの」

和音はバイオリンを肩から下ろすと、しばらく呆けたような顔で美しい輝きを放つドラグノフを見つめていた。

それから納得したように頷く。

「そうか。僕は勘違いをしていたようだ」

「やっと分かってくれた?」

アリスカはほっとする。

「ああ」

和音は頭からどくどく血を流しながら、爽やかに微笑んだ。

「君は愛を奏でるのではなく、寂しい狼たちのハートを撃ち抜く愛の狩人というわけだね」

「……は?」

「なるほど、さすがは慈愛の天使アリスカ。その調子で眼鏡男子の心をズキューンと撃ち抜いてくれたまえっ」

いや、別に眼鏡男子はドラグノフで撃ち抜かれて恋に落ちたわけではありませんが。

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