オノマトペ
湿っていた空気がだんだんと肌をするりと滑るようになってきた。

そんな気持ちのいい風を受けながら、天神学園の廊下を歩いていた赤髪の勇者とハニーブラウンの髪を両耳の上でお団子にしている姫は、校庭に何やら大きなステージが建設されているのを見た。

「あれ、なんだろう?」

「……さあ」

勇者の問いに、姫である勇者嫁は首を傾げる。

その後ろを、数人の生徒たちが談笑しながら通り過ぎていく。

「今年のタイマントーナメント、誰が優勝すると思う?」

「誰出るんだよ」

「スペシャルバカは出るらしいぞ?」

「去年予選落ちしただろ、スペシャルバカ」

「いやいや、最近のヤツはちょっと違うみたいだぜ? 台風の目になるんじゃないか?」

「へぇ、じゃあ期待しとくかなー」

「他は?」

「えっと、あれだ、先生たち……」

生徒たちの話し声は、徐々に遠ざかっていく。

それを見送り、赤髪の勇者はまた首を傾げた。

「タイマントーナメントってなんだ?」

「……さあ」

勇者の問いに、勇者嫁はやはり無表情に首を傾げた。

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