オノマトペ
観覧席から立ち去る面々は、興味津々にリディルたちを見ていて。

「フェイ、下ろして、恥ずかしいっ……」

ぱたぱたと彼の肩を叩いて抗議する。

しかし。

肩に顔を埋めるフェイレイからは、大きな溜息が聞こえてきた。

「ああ~、悔しい」

その言葉とともに、リディルを拘束する腕に力が込められる。

「やっぱ負けるのは悔しいなー。リディル、慰めて」

その言葉に、リディルは抵抗する力を緩めた。

相手の強さを認めながらも、誰よりも強くなることを目指していたフェイレイには、この結果は悔しかったに違いない。

その気持ちは何を言っても偽れないか。

しばらくは仕方ない、とリディルは微笑みながらフェイレイの背中をあやすように優しく叩く。

それで少し落ち着いたらしい勇者は、がばっと顔を上げた。

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