オノマトペ
だんだんと大きくなる靴音に振り返ると、ハニーブラウンの髪を左右でお団子にした翡翠の瞳の少女が、薔薇のアーチをくぐってこちらへ歩いてくるのが見えた。

「あ、リディルさん」

ヴァイオリンを下ろし、声をかける。

「……ごめんね。邪魔だったかな」

「いえ、大丈夫ですよ」

そう微笑みかけると、リディルは拓斗の持つヴァイオリンに目を向けた。

「……拓斗だったんだ」

「はい」

「和音かと思った」

その言葉に、少しだけドキリとした。

「……似てますか?」

「うん」

頷くリディルに、拓斗は曖昧に微笑む。

それはまだヴァイオリニストを目指していた頃に、良く言われていた言葉だった。

同じ家に育ち、同じ師に習い、同じところで練習をし。

尊敬し、憧れの存在でもある兄に似るのは嬉しいことのはずだった。


それが突然。

二年前あたりから、そうは思えなくなった。

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