オノマトペ
あたたかな太陽の香りがした。

そう思ったときにはもう、拓斗の身体から痛みは消えて失くなっていた。

「……あれ?」

立ち止まり、振り返る。

以前にも同じことがあった。

フェイレイとリディルがこの世界に現れたとき。

あまりにも強い暴風に吹き飛んだ椅子や皿で怪我をしたときに、同じようにあたたかな光に包まれて……傷がすっかり癒えてしまった。

「あ……ありがとうございます」

リディルに向かって頭を下げる。

「私に付き合ってくれた、お礼」

そう言う彼女にもう一度礼をして。

拓斗は屋敷へとダッシュした。



それを見送ったリディルとフェイレイの周りには、碧色の淡く丸い光が集まる。

「おー、みんな心配してんなー」

集まってくる精霊たちに、フェイレイは笑みを向ける。

「……大丈夫だよ。どこも怪我してないから」

やってきた光を優しく両の掌で包み込み、リディルも笑う。

彼女はこの世界とは違う星の皇女。精霊の加護を受けた者の存在のことは解るのか、この星の精霊たちもリディルやフェイレイに好意を寄せてくれている。

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