オノマトペ
東城にしてみれば、こんな大豪邸の、こんな金持ちの人間に仕えているにも関わらず、やることと言えば主人の行動を見守ることくらいだという仕事内容に不満があるのだ。

誇り高き執事が、何もせずに主人を働かせるなど──と。

実際、数年前には使用人たちによる『お願いですから仕事をください・ストライキ集会』が行われたくらいだ。

それくらい橘家では仕事がない。

『自分で出来ることは自分でやる』という橘家家訓が、どーんと目の前に聳え立つ。

ならば辞めれば良いのではないか……。

そう思うのだが、彼らには彼らのプライドがあり、一度仕えると決めた家を去ることなど以ての外、らしい。


そういうわけで、現在は使用人たちの意を汲んで、学校が休みのときだけは執事、メイドたちにすべての仕事を渡す、ということになっている。

それでもなお不満が残るのか。

東城はちくちくと、拓斗の背後から「仕事くれ~」の視線を送っているのだった。

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