オノマトペ

活気ある市場内の温度が急激に下がったような感覚に、師匠はぶるりと身震いをした。

更に、自分を見つめる和音の美しい切れ長の瞳が、刃物の切っ先のように鋭くなったのを見て心臓が飛び上がった。

何故だかバイオリン小僧の背後に、火柱が立ち上がる幻影まで見える。

「遊び半分とは失敬な！　僕は弟と妹に新鮮でおいしい魚介類を食べさせるために命を張ってここまで来ているんだよ！　ラララ、命がけ～♪　師匠、君こそ僕を馬鹿にしないでくれ～たまへ～♪」

バイオリンと和音の歌が、魚市場の喧騒の中に凛と響き渡る。

その和音の後ろで、フランケンシュタイン似の西坂が涙を流しながら拍手をしていた。

……ちょっと怖い。

「な、なんなんだよ、そのおかしな気迫はよおお～！」

師匠、ちょっと押され気味。

そうこうしている間に競りは始まり、和音と師匠と卸問屋たちの熱き戦いが幕を開けた。




◇



ちゃんとした橘家の様子を書こうと思って書いてみたら……あれ、ちゃんとしてない？　なんで？

それは橘家だから。

がぼーん。


次こそシリアスモードでいってみます。



ちなみに、三兄妹の部屋を一言で表すと、

和音、ゴージャス。
花音、ファンシー。
そして拓斗、フツー。