オノマトペ
思えば、随分と様変わりしたものだ。

烏丸鷹雅(からすま おうが)が生まれた頃は、この辺りは緑の濃い自然の香りしかしなかった。

近くを流れる川には河童がいたし、古い家には座敷童がいたりした。

そこかしこに同じ妖たちがいたのに、山が削られ、街に建つ建物が高くなり、自然の香りが薄れていくとともに仲間たちの姿は見えなくなっていった。

娯楽の増えた現代では、怪異の存在は非現実的なものであり、気に留める存在ですらないのだ。

そうすると、人間の畏れから生まれる妖たちは消えていくしかない。

今はもう、鷹雅のような高位の妖くらいしか、人前では存在していられないのだ。

古くからいる妖の大御所たちは、それを面白くないと感じている。

けれども、鷹雅はそうではなかった。


「別にいいじゃねぇか。世が変われば求めるモノも変わるんだよ。それに溶け込んで生きろよ、ハゲ親父が」

フン、と鼻を鳴らして言う鷹雅に。

「ハゲはお前もだ、この若ハゲ野郎がー!」

てっぺんつるぺかーな父が、高下駄で息子の後頭部を蹴り上げた。

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