オノマトペ
遥か昔に祖父、及び父が、ちょっとおいたをして某雪女に叱られてから、烏丸の一族は頭のてっぺんが寂しいことになっている。

てっぺんだけならまだしも、祖父のように拝みたいくらい綺麗になくなっているのを見ると、雪女の呪いが未だに続いているのだと思わざるを得ない。

(ったく、ボケジジイにクソ親父が! 何余計なことしてくれちゃってんだよ!)

風呂上り、丁寧に黒髪をタオルドライしつつ、つるつるなデリケートソーンも優しく拭いてやる。

幸い、鷹雅のデリケートゾーンは、まだ頭襟で隠れるくらいの大きさでしかない。

少し髪を盛ってやれば、うまいこと隠れる。

「お前たち、気合い入れろよー」

某育毛剤をちょちょっとつけて、生まれたときから怠け者の毛根たちに刺激を与える。



このように涙ぐましい努力をしている鷹雅は、この春から天神学園に通うことになっていた。

妖の存在が忘れ去られてきている昨今、うまいこと世の中を渡っていくには、どうしたって勢力の強い者のいる世界に寄り添って生きなくてはならない。

しかし別に、人間に支配されようというわけではない。

(うまくすれば、こっちがな)

髪を整え、鷹雅はフフンと鼻で笑う。

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