オノマトペ
そんな毎日が続き、さすがの小雪もキレた。

青白く光る氷刀六花を振りかざし、ゴオオオと吹雪を纏わせながら、苛々と飛燕を睨みつけた。

「今すぐ妾の前から消え失せぬと、氷像にして跡形もなく斬り刻んでやるぞ」

「成る程、力ずくで奪ってみせろというのだな。確かにそうだ。儂ら妖の世界は力こそすべてだからな。儂の強さを主に見せ付けろというわけだな。そして身体に儂という痛みを刻み付けろと言うのだな。ぐふふっふ」

何故か頬を赤らめる飛燕。

……お前本当に天下の大妖怪か。


そうして後世にまで語り継がれる大乱闘が始まった。

炎が森を焼き、氷塊が山を削り、風が大地を剥ぎ取り、吹雪が数多の命を永眠させた。

後に出来るこの辺り一帯の湖や川は、この二人の激しい乱闘の跡なんだとかいう話だ。

幾日も幾日も続いた大乱闘の末、飛燕の邪ラブラブ光線よりも、小雪の鴉断固拒否ぶりが勝り、やっと決着がついた。

飛燕の頭頂部が、毛根ごと氷刀六花に削ぎ落とされたのである。

はらはらと、儚げに舞う黒髪。

その向こうで、薄い青の瞳に怒りの炎を宿しながら、小雪はこう言った。


「二度とその禿頭を妾に見せるでないぞ。見せたら最期、末代まで祟ってやるわ」


< 73 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop