オノマトペ
ほの明るくなった外に出てみると、ふわりとした優しい香りに包まれた。濃い緑の中に溶け込むように広がる、桜の控えめで甘い香り。

なんだか安心するその香りに包まれながら少し歩いていくと、ウサギの五所川原が凛々しい顔立ちで立っていた。

「五所川原くん、どこに行ってたの……?」

誰も起こさないようにと小声で語りかけると、五所川原はきりりとした凛々しい目を細めて笑った。

『いつも僕をかわいがってくれる花音ちゃんに、お礼をする準備をしていたんだぴょん』

「お礼……?」

『うん。とっても素敵なところに連れて行ってあげるよ。さあ、僕につかまって』

花音は不思議に思いながらも、言うとおりに五所川原のふわふわした白い腕をそっと握った。

すると身体がふわりと浮き上がり、バランスを失って後ろにひっくり返りそうになった。

「わあっ!?」

慌てて五所川原にしがみつく。

『怖がらなくても大丈夫だぴょん。さあ、行くよっ!』

五所川原がもこもこの手を振り上げると、凄まじい風の抵抗を受けるスピードで舞い上がっていった。

< 78 / 287 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop