オノマトペ
今日も元気良く雪女に追いかけまわされていた鴉天狗──あまりの顔色の悪さに心配されていただけ──は、震えながらばさりと黒い翼を広げ、初夏の眩しい青空へふらふらと舞い上がった。

下の方から雪ん子の心配する声が聞こえるが、無視だ。

頭のてっぺんにある毛穴たちが、全力で彼女を拒否している。

しばらくふらふらと飛び続けて、鷹雅はやっと一息ついた。

「ここまで来りゃいいだろ……」

全身に疲労を滲ませながら、地上へと下りていく。


天下の鴉天狗が、何故雪女に怯えなくてはならないのか──。

しかも雪菜は半妖である。

力関係でいったら、絶対的にこちらの方が上なのだ。

それなのに。ああ、それなのに。

──頭が寒いんである。

大事な髪の毛が、なんだか抜けそうで怖いんである。

鷹雅は自分の貴重な黒髪がはらり、はらりと落ちていくのを想像し、ぶるりと身震いした。

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