桜花舞うとき、きみを想う
雪の日、列車に揺られて地元の連隊がある場所へ赴くと、すでにその日召集された人々の班分けがされていた。
見知った顔こそいなかったものの、ぽつぽつと耳に入る会話を聞く限りでは地元の同年代が集まっているようだった。
(兄さんも、ここに来たのかな)
話す相手がいないぼくは、名を呼ばれるまで殺風景な部屋でそんなことを考えて過ごした。
やがて指定された班のもとに集合すると、慌しくてはっきりと記憶していないが、たしか身元の確認をされ、身体検査を受けた。
そして着ていた国民服を脱ぐよう指示され、支給された軍服に着替えた。
軍服は、国民服や普段着に比べて重量があり、かと思えば動きやすく作られていた。
それを身に纏った途端、ぼくはいよいよ兵隊になるのだという実感が湧き、身が引き締まる思いだった。
周囲もきっと同じ思いであったのだろう、誰もが精悍な顔つきに見えた。
「点呼!」
号令が室内に響き、ぼくらは班の中で決められた順に並び、ひとりずつ番号を威勢よく発した。
こうしてぼくは、二等兵となった。