桜花舞うとき、きみを想う
話を終えると、村井少尉は笑みを浮かべ、ぼくの目をまっすぐに見た。
ぼくはその視線の強さとやさしさが入り混じった色に困惑し、ますます答えに困った。
「もし引き受けてくれるなら、今日にでも荷物をまとめて、俺と一緒に来てもらうことになる。これは命令ではないが、さっきも言ったように、きみにとって悪い話ではないと思う」
たしかに悪い話ではなかった。
それどころか、この訓練から解放されるのならば、願ってもいない話だ。
ぼくは、いきさつはどうあれ、この話に乗ってみようと思った。
料理に対する不安は、もしかしたら訓練に対するそれよりも大きかったかもしれない。
でも、いわゆる人を殺すための訓練よりは、自分にずっと向いていると思った。
「ぜひご一緒させてください。お役に立てるよう、全力を尽くします」
「よし、決まりだ!俺はさっそく軍曹殿に話をつけて来よう。きみは兵舎に戻って荷物の整理をしなさい」
少尉は明るい調子で言うと、颯爽と会議室を出て行った。