桜花舞うとき、きみを想う


「アヤちゃん」

そう言いかけたぼくは、振り向いた先にいたきみが、今にも泣き出しそうな顔をしていたのを見て、言葉に詰まった。



「ア、アヤちゃん、どうしたんだい」

きみは俯いて、首を横に振った。

「気分が悪いのかい?日差しが強すぎたかな」

また首を振る。

ぼくは、弱ったな、と頭を掻いた。

ここまで歩くのに、ぼくがあまりに無愛想だったから気を悪くしたんだろう。

どうしたものか、とズボンのポケットに手を入れると、手に固い感触があった。

(あ…)

出掛けに食卓にあったのをポケットに突っ込んだ、カルミンだった。

ぼくは筒状の包みを破いて、ひと粒取り出した。



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