桜花舞うとき、きみを想う
ぼくを乗せた巡洋艦は、順調に沖縄へと向かっていた。
敵艦に出くわしたこともなく、毎日が穏やかな航海で、けれど烹炊所の中だけは戦場さながらに忙しい日々だった。
海軍の兵士が、こんなにもよく食べるとは知らなかったぼくは、毎回のように、
「本当に、よくこれだけの食料が軍艦に積めるものですね」
と驚いてばかりいた。
そんなぼくを、磯貝さんはいつだって笑った。
「これだけ広い船だぞ。自分に関係ない部屋なんていくらでもある。降りるまでにすべての部屋に入る人間なんていやしないって言われてるくらいだ。食料を積む場所なんていくらでもあるってことよ」
「はぁ、そんなもんですか」
頷きながら、召集される前、食糧不足に嘆いていた広田の顔を思い出した。
いつの日だったか、芋ばかりで飽きたと言って、ぼくの弁当にあった煮物を、うまそうに食っていた。
我が家はましなほうだったとはいえ、やはり豊富とは言えず、つまりは一般家庭にいくはずだった食料は、すべて軍隊に取られたと考えていいだろう。
(軍人さんは食べなきゃ戦えないってのはわかるけど、それにしたって食べすぎだろう)
ぼくは山と積まれた料理の大皿を眺め、感嘆にも似たため息を漏らした。